「ゆめちから(当時の系統名は北海261号)」の信じられないような「蛋白含有量とその強靭さ」などの優れた素質は、試験データとして広く小麦粉関連の加工食品業界に公表されました。その努力も実り、遂に平成20年(2008年)に北海道の優良品種として認定され、翌年の平成21年(2009年)には、品種名「ゆめちから」として品種登録されました。

その後の普及拡大のスピードには目を見張るものがあり、平成24年(2012年)ではおよそ5千トンだった生産量が、翌平成25年(2013年)では2万5千トンまで増加し、わずか4~5年で、パン用春撒き小麦の「春よ恋」を超える生産量にまで達しました。平成26年産の国内小麦11月末検査結果を見ると、品種別生産量(検査数量)で、「ゆめちから」はついに2位にまで登りつめたのです。この異常ともいえる生産量の増加は市場の需要を大きく上回るスピードで、一時的には近年で最悪のミスマッチ(供給過剰)といわれる状況に陥るとまでいわれていました。

しかし、一方で、「ゆめちから」を使いこなすための研究も同時並行に進んでいて、多くの関係者の方々の理解と、普及に向けた努力があって、今なのです。具体的には、その一つとして農林水産省の「画期的な北海道産超強力小麦のブレンド粉を用いた自給率向上のための高品質国産小麦食品の開発」プロジェクトに大手製パン、製麺メーカーが参画し、その商品開発・販売に取り組んでくれたことが大きな追い風となりました。

image_yt2もう一つは全国の学校給食パンを提供している団体(全日本パン組合連合会)の努力があります。学校給食では常に「ご飯(米)」VS「パン」の構図で議論され、12年前辺りから米が米粉になって、学校給食パンに侵入してきています。これに輪をかけるかの如く、和食が世界遺産に登録され、パン給食の日数は激減してきています。このような中で、外国産小麦+国内産の麺用粉(+米粉)のうち、外国産小麦を「ゆめちから」に置き換えよう!さらに「ゆめちから」の性能が高いため、地元の麺用小麦の使用比率も増え、地元産が増えるということで、給食パン工場の存続をかけた取り組みが為されました。この取り組みは平成21年(2009年)より全国区で展開され、あらゆる困難を乗り越えた末に、平成26年(2015年)に静岡県で実現しました。前者の大手製パン・製麺メーカーの上市への速度と比べると、給食関係者の対応の遅さが目立ちます。

ここで話を少し戻します。「この品種は必ず業界の役に立つ」という、私が製パン性を評価した製品は、当時の国内産小麦では高品質が得られなかった「食パン」です。フランスパンやドイツパンに使えない訳ではありませんが、「ゆめちから」の本領は、白い小麦粉(灰分が低め)の小麦粉で作った生地を強く叩いて非常に薄く滑らかな膜質に仕上げた時に最大限発揮されます。これに該当する小麦粉は「日本の小麦の底力」→「ブランド名鑑」で探してみて下さい。市場では一部誤認されている人もいます。黒い粉(灰分が高め)が美味しいといわれますが、これは直焼きのフランスパンやドイツパンの事なのです。

image_yt2(2)このように「ゆめちから」を使いこなすに当って様々な課題、例えば「最適なブレンドによる製パン性の確立」などはありましたが、やがて、そうした技術的な課題が解決され、ブレンドによって最適化された「ゆめちから」の特性が活かせる製品として、国内の消費量が最も多い、食パン、ロールパン、菓子パンがその主体となりました。

「ふんわりソフト」さが求められる製品は、「ゆめちから」を導入する事で、今まで困難であった食パンや、菓子パンまでも国内産小麦で作ることが可能になったのです。

「ゆめちから」の実力は、今や存分に発揮されているのです。

(つづく)

【資料提供】

(一社)日本パン技術研究所 原田昌博

> 「日本の麦の底力」ブログトップ