「ゆめちから」は、府県産の「製パン性がやや低い品種や麺用品種」とブレンドする事で、北米産小麦使用製品と同等か、それ以上の製品を作ることができます。また、製法の工夫次第では、菓子への利用も進んでいます。

mugi_blog_yt3つまり、「ゆめちから」は、もっと色々な製品の原料として応用できる可能性を十分に持っている品種であると云う事です。

専門技術的な詳細や製菓への利用技術については割愛するとして、製パンにおける「ゆめちから」のずば抜けた「加工特性」は、外国産パン用小麦よりも高蛋白であるという前提条件があってのことであると云う点を強調すべきであると思います。

それも、決して、品種の持つ遺伝的な素質(超強力)だけではその実力・特性を活かし切れるわけではなく、更なる、生産・加工への工夫が必要となります。そうすることで「ゆめちから」の実力は活かされるのです。

「ゆめちから」が高蛋白で収穫されるには、生産者の方々の栽培努力があっての事であるのは言うまでもないことですが、万が一、蛋白含量が外国産並みと同等か、それ以下になると、「ブレンド能力」が劣ってしまい、そうなればそれが「人気」に反映し、マーケットで厳しい状況となることもあり得ます。

そうした状況にならないためには、大手製パンメーカー、大手製麺メーカー、学校給食パンなどの大型安定需要先に対して、その期待を裏切らない「当初の」品質維持が必須となります。

一方、品質以外の危機もあります。それは昨年下半期から業界をざわつかせています。

実際に生産現場では昨年産(27年収穫)は最高の収量となりました。それでも、28年産の作付けは増えていません。一方、種まき直後に「ゆめちから」の需要が一気に増加したため、28年産が豊作にならなければ市場で流通される「ゆめちから」が減ってしまいます。つまり、種まき前に市場の最新の情報が農家に伝わらなかったのです。

そして、価格では28年産の入札で今の10%アップの上限に達し、逆に外国産小麦は今春に値下がりします。これではデフレの食品業界において国内産使用製品の割高感が出てきます。

加えて、昨年からの市場の人気が拍車をかけて、豊作だった筈の27年産の在庫が28年産の新年度麦に切り替わるまでの間に足りなくなってしまい、欠品する可能性をはらんでいます。市場では安定供給維持のため、これを恐れて市場への普及拡大にブレーキがかけられています。

他方、新品種育成に関わるプロジェクト研究が昨年度末で中止になりました。このため今、「春よ恋」の耐病性や栽培性の改善。「きたほなみ」の土壌伝染病に対する抵抗性付与、本州では同一用途で品質がバラバラな多品種少量生産の収束に関する試みが道半ばで頓挫しています。
その逆の動きとして、地方の地産地消として小さな市場における普及に対して支援されるようになりました。

従って、5年以上先の「新品種」が普及するまでの間、今の国産小麦パンブームを「ゆめちから」の、まさにその力で維持していくことが大きな課題であると考えます。

その方向性を違える事無く、今ようやく見えてきた国産小麦実需拡大のニーズを全ての関係者が共有し、その方向に邁進することがどれほど重要なことであるか。

もし、利害的に間違った判断をすれば、国内産小麦を取り巻く業界全体に大きな不利益を与えかねません。平成11年(1999年・麦新品種育種開発プロジェクト)以降、研究費を投じて続けてきた国内産小麦の新品種開発で、今ようやくその努力の成果を享受できているのです。

「ゆめちから」の次の新品種は、「未来」そのものなのです。

補足)「ゆめちから」小麦写真の提供:やもとかおる(チャップスタジオ)
【資料提供】
(一社)日本パン技術研究所 原田昌博
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